この記事は、サムライカレー代表の森山が書いています。常日頃からお話ししている「英語とコミュニケーション」の話を、もう少し詳しくまとめました。
「英語が話せないから、海外のプログラムは無理だと思う」。学生さんからよく聞く言葉です。
先日、カンボジアで翻訳機能のついたスマートグラスを初めて体験しました。そのとき感じたことは、私がサムライカレーで一番伝えたいことと、そのまま重なっていました。
この記事では、英語が苦手な人が海外で商売をするとき何が起きるのか、翻訳ツールで何が変わり、何が変わらないのかを整理します。
英語が話せなくても、海外で商売はできる
先に結論を書きます。英語が話せなくても、海外で商売はできます。
サムライカレーの参加条件に、英語力の基準はありません。これまでの参加者にも、英語が得意ではないまま参加した学生が多くいます。それでも、チームで商品を企画し、現地のお客さまに声をかけ、売上を作ってきました。
もちろん、英語が話せることは役に立ちます。それは間違いありません。ただ、「話せないから参加できない」「話せないから売れない」というのは思い込み、あるいは自身が勝手に作っている制約なのです。
その理由を、スマートグラスの体験から順に説明します。
カンボジアの飲食店で、翻訳スマートグラスを初めて体験した

体験したのは「Even G2」というスマートグラスです。先に断っておくと、メーカーとの関係はなく、ここに書くのは私個人の感想です。
見た目は、普通のメガネです。カメラもついておらず、レンズに機械らしいものは見当たりません。ところが、かけると視界の一部に小さな緑色の文字が浮かびます。スマートフォンのアプリとつながっていて、聞こえてくる言葉を翻訳し、その文字を目の前に出す仕組みです。
同行していたスタッフが使っていたものを、カンボジアの飲食店で借りました。店員さんが英語でメニューの説明を始めた瞬間、その内容が日本語の字幕になって視界に流れてきました。
相手の顔を見たまま、会話が続く
最初に驚いたのは、翻訳の正確さより「遅れがほとんどない」ことでした。相手が話し終わるのを待たず、話している途中から日本語が出てきます。だから、聞き返さなくていい。うなずくタイミングも、相手の目を見るタイミングも、普通の会話と変わりません。
ここで正直に言っておくと、翻訳という機能だけなら、スマートフォンのアプリでも同じことができます。スマートグラスにできて、スマホにできないことは、機能の面ではほとんどありません。
違うのは、使っている最中の「かたち」です。翻訳アプリを使ったことがある人なら分かると思います。あれは、会話が一度止まります。スマホを取り出し、画面を相手に向け、相手が話し終わるのを待ち、結果を読む。その間、相手も自分も、画面を見ています。スマートグラスには、それがありません。手は空いたまま、視線は相手に向いたまま、目の前に翻訳が出てくる。言葉にすると小さな差ですが、使ってみると、まったく別のものだと分かります。
相手に「翻訳している感」を与えない
もうひとつ、使ってみて初めて気づいたことがあります。相手から見たときの印象の違いです。
スマホを操作しながら話すと、相手は「この人は言葉が分からなくて、頑張って翻訳しているんだな」と受け取ります。親切に待ってくれる人もいますが、会話の相手というより、手助けが必要な人として見られる。これは、商売の場面では小さくない差です。
スマートグラスの場合、相手から見えるのは、普通のメガネをかけて、自分の目を見て、普通に返事をしている人です。翻訳していることが相手に伝わらない。だから、相手も構えず、いつもどおりに話してくれます。私が「これは違う」と感じた一番の理由は、精度でも速さでもなく、この点でした。
自分が話すときも助けてくれる
驚いたのは、聞き取りだけではありませんでした。
英語がすぐに出てこないとき、日本語で話すと、その英訳が表示されます。表示された英語をそのまま口に出せばいい。単語が出てこなくて黙ってしまう、あの気まずい数秒がなくなります。
公式サイトによると、対応言語は35言語です(2026年9月時点)。カンボジアの飲食店で起きたことが、35の言語で起きる。正直に言えば、iPhoneが出てきたときと同じか、それ以上の衝撃でした。
ちなみに、わざわざ「英語→日本」「イタリア語→日本語」などとしなくても、「AUTO→日本語」とすることで、相手の言語が何であれそれがEven G2 がサポートする言語であれば指定言語(日本語にすることが多い)に翻訳してくれます。

もちろん、万能ではない
騒がしい場所では声を拾いにくいこともあります。電池も切れます(とはいえ、1回の充電で約48時間もちます)。翻訳の自然さは言語や話し方に左右されますし、私が試したのは英語との会話です。
それでも、初めてかけたその日に「これで会話ができる」と思えた。それが正直な感想です。
精度は、これからさらに上がっていく
今の時点でこの精度ですから、半年後、1年後にはもっと使いやすくなっていると考えるのが普通です。
「語学ができないからコミュニケーションが取れない」という場面は、こうしたツールによって、これからどんどん少なくなっていきます。
語学は、コミュニケーションの道具のひとつ
語学を学ぶことは大切です。ここは誤解しないでほしいところです。
言語そのものを深く研究していきたい人にとって、語学は一生かけて学ぶ対象です。語学を集中的に学びたいなら、語学留学が合う場合もあります。
語学留学と海外インターンのどちらにするか迷っている人は、語学留学と海外インターンの違いを目的別に整理した記事も参考にしてください。
ただ、多くの人にとって、語学は「相手とやり取りするための道具」です。道具である以上、より便利な道具が出てくれば、置き換わっていく部分があります。翻訳スマートグラスは、まさにその流れの中にあるものです。
だからこそ、私は「英語が話せること」よりも「コミュニケーションができること」の方が、これから価値が高くなると考えています。
このツールが、サムライカレーで学ぶことと重なる理由
スマートグラスを外してから考えたのは、道具の話ではなく、販売の話でした。
サムライカレーの参加者が現地でやっていることは、突き詰めれば「お客さまとの会話」です。声をかける。反応を見る。値段を聞かれて答える。買わなかった理由を、表情から読み取る。相手の目を見て、その場でやり取りすることそのものが販売です。
これまで、英語が苦手な参加者は、この会話の入口で立ち止まることが少なくありませんでした。言いたいことはあるのに、言葉が出てこない。相手が何を言ったのか分からず、笑ってごまかす。そこで会話が切れて、次に進めない。
スマートグラスがやってくれるのは、まさにこの「入口」を開けることです。会話を途切れさせず、相手の顔を見たまま続けられる。つまり、サムライカレーで本当に学んでほしい部分に、英語が苦手な人がそのまま到達できるということです。
私がこのツールに強く反応したのは、そこでした。英語の勉強を代わりにしてくれるからではありません。私たちが「ここからが本番だ」と思っている場所まで、参加者を連れていってくれるからです。
言葉が通じても、それだけでは売れない

ここからが、サムライカレーで学んでほしいことです。
翻訳ツールがあれば、言葉は通じます。しかし、言葉が通じたからといって、商品が売れるわけではありません。
カンボジアの現場では、参加者は自分たちで企画した商品を、現地のお客さまに販売します。そこで起きるのは、こんなことです。
- 声をかけても、立ち止まってもらえない
- 試食はしてもらえたのに、買ってもらえない
- 値段を聞かれて、答えたら離れていかれた
- 隣のチームの方が売れている理由が分からない
これらは、英語ができるかどうかとは別の問題です。商品、価格、見せ方、声のかけ方、販売場所。お客さまが何を見て、何を感じて、なぜ買わなかったのか。そこを考えて、次の日に変えてみる。これがサムライカレーの中身です。
言葉の壁が下がると、成功体験の機会が増える
ここで、翻訳ツールの本当の価値が見えてきます。
共通の言葉がなくても、身振りや表情でコミュニケーションは取れます。実際、多くの参加者がそうやって売ってきました。
ただ、相手が何をどう感じて、何を言っているのかが分かれば、売れなかった場面が売れる場面に変わるかもしれません。1ドルでしか売れなかったものが、2ドルで売れる場面もあるでしょう。
つまり、言葉の壁を越えた先にある「考えて、試して、改善する」経験の機会が増えるということです。ツールは、その入口を広げてくれます。
サムライカレーは、英語を学ぶプログラムではない
サムライカレーは、カンボジアのプノンペンで、商品企画から販売までを体験するプログラムです。
1週目は座学を中心に、マーケティングの基礎と販売の準備を行います。2週目は販売実践が中心です。3〜5名程度のチームで仮説を立て、売って、結果を見て、翌日に改善します。最終日には、売上と施策と学びを整理して発表します。
この流れの中に、「英語を学ぶ」という項目はありません。英語は、必要な場面で使う道具のひとつです。得意な人はそれを活かせばいいし、苦手な人はチームの中で別の役割を持てばいい。翻訳ツールを使ってもかまいません。
学んでほしいのは、お客さまに向き合って、考えて、行動して、変えることです。
英語が苦手な人が、参加前に用意しておきたいもの

英語力より先に持ってきてほしいものがあります。
- 売れなかったときに「なぜだろう」と考える姿勢
- 言葉が通じなくても、まず声をかけてみる行動力
- チームの中で、自分にできる役割を見つける柔軟さ
- お客さまの反応を、正直に受け止める素直さ
これらは、日本にいる今から準備できることです。
そして、これらは翻訳ツールがどれだけ進化しても、置き換わらない部分だと私は考えています。
英語ができないことを、海外に出ない理由にしなくていい
翻訳スマートグラスを体験して、私は改めて確信しました。語学の壁は、これからますます低くなります。
そのぶん、「言葉が通じた先で、相手と何をするか」が問われる時代になっていきます。海外で商売を体験するというのは、まさにその力を試す機会です。
英語が話せないことを、海外に出ない理由にしなくていい。まずは、サムライカレーで実際に何をするのかを見てみてください。


