サムライカレーができるまで 〜 なぜ我々はカンボジアでカレー屋を作ったのか?
カンボジアで、普通の大学生が、カンボジア人相手にカレー屋をやるという、前代未聞の海外インターンシップ型研修プログラム、サムライカレープロジェクト。
こんな革新的な(気の触れた)プログラムがなぜ誕生したのか?どんな苦労をしたのか?そして、どんな未来を作りたいのかを、したためました。
バナーをクリックすると、その章までとびます。途中からでも読めるように編集してますので、ぜひ(主に暗黒編を)どうぞ!
第一章:サムライカレーを作った理由を、私のキャリアとともに振り返ります。
第二章:カレーが売れない!参加者も集まらない!から、ワールドカップの試合をきっかけにブレイクスルーした話です。
第三章:サムライカレーでは、外国人も喜ばせることができる人材を育てていきます!
第一章:黎明編

私は、大学卒業後、シリコンバレーの外資系企業日本支社・日本オラクル、日本出身のグローバル企業・日産自動車で働きました。
外資系企業は自由です。
2000年から、Work@Homeという制度が導入され、会社に行かずに日本で仕事してもOKでした。ちなみに、私はバランスボールに座って仕事をしてました。
グローバル企業はエキサイティングです。
英語下手くそなのに、1日に6時間くらい 13カ国の工場のスタッフとの共同作業をするなど、無茶をしていました。
ちなみに、一番印象に残ったのは「スペインは暑いから、8月は海に行かなきゃいけないんだ」と言って、スペイン工場のマネージャが1ヶ月間音信不通になったことです。
この10年間で、異文化と、外国人と、仕事をする面白さを、で感じました。
その後、ついうっかり、ビジネスクラスで1年間世界一周という人生の夏休みを満喫した後に、こんなことを考えました。
「外国人と一緒に働く楽しさを、もっとたくさんの人に知って欲しい」
多くの日本人は、外国人慣れしていないので、外国人と働く事に恐怖を感じてます。
でも、別に英語が上手くない私でも、外国人と働くのはそんなに大変ではありませんでした。
だから、もっとたくさんの人にチャレンジして欲しい。
奇しくも、そのころリーマンショックから欧州危機と欧米の景気が悪くなっていました。
外資系企業の求人がほとんどなくなる中、私は海外で働いてみようと思い、欧米各国で仕事をさがしてみました。が、当然そんな仕事は少なく、ビザもとりにくい状況。
だったら、欧米以外の国、アジアならどうだろう?ということで、東南アジア各国で就活をしてみました。
すると、シンガポール、香港、タイ、インドネシアなどで、日本人を求める求人がたくさんあります。これはスゴい発見なのではないか?ということで、ブログに記事を書いていたらたちまち数十万人の人が見に来てくれ、出版社から声がかかりました。
こうして、外国人と働く楽しさを伝える「海外就職研究家」稼業がはじまったのです。
著書:セカ就!の表紙
こうして、本やWebを使って外国人と働く楽しさを伝え、海外で働く方法について広めていき、多くの海外で働く日本人を輩出しました。
しかし、2年ほどやっていて、気がついたのは、文字で伝えられることには限界があるということです。
スキーの楽しさを伝えるためには、実際にやってもらうのがいちばんな様に、海外で外国人と働く楽しさは、実際に体験するのが一番なのです。
この考えが、サムライカレープロジェクト設立の動機です。
で、カンボジアに行って、その3ヶ月後にはサムライカレーが始まるわけです。
第二章:暗黒編
3ヶ月で事業を興し、3週間でカレー屋を作る
完全に思いつきでプログラムを作り、ノリと勢いとサムラカレーという名前の語呂の良さだけで始めたサムライカレープロジェクト。
10月に視察をして、1月にはサムライカレープロジェクトが開始しました。
Webページすらないこのプログラムに集まってくれた4人の勇者たちと始める、カレー屋作り。
最初のミッションは「自分たちが寝るベッドを買ってくるでござる」
その後も「カレーを作ろうとしたら、どこにもスパイスが売ってない」など、一歩歩くごとに困難にぶつかりながらも、1期生の頑張りにより、1月3週に、カレー屋もオープンしました。
オープン当初は日本人のお客さんがそれなりに来たものの、カンボジア人のお客さんが全然来ません。
店のそばを歩いているカンボジア人に試食をしてもらっても、いい顔をしません。
「あれ・・・これは、ヤバイのでは・・・。」
その予感は、徐々に現実と化していきます。
カレーが売れない!!!
とにかくカンボジア人がカレー屋に来ない!
イベントに出張しても、カレーが売れない!
サムライカレーをスタートして約半年後に独立した店舗を構えたわけですが、どうにもこうにもお客さんが来ません。
カンボジア人のおばちゃんに習ってカンボジアのカレーを作ったり
カレーパンにしたり、プロの料理人雇ってバターチキンカレーの作り方を習ったりあの手この手を打つのですが、なかなか成功しません。
また、店舗で運営をする問題点として、結果がすぐにでないということもあります。
新しい商品を開発して、チラシを配っても、すぐにはお客さんが増えません。
2週間の短期プログラムだと、結果が出る前にタイムリミットになってしまうのです。
研修生の数が伸びない!!
また、1年目48名だった参加者が、2年目も50名とあまり延びませんでした。
と、いうのも、サムライカレーのテーマが「海外で起業体験しよう!」という、海外で働きたい人、起業したい人向けだったのですが、世の中に海外で働きたい人も、起業したい人もそんなにたくさんいません。
私のtwitterのフォロワーの人にはそういう人が多かったわけですが、その中で来れる人が来てしまうと、新しい参加者が出てこなくなってしまうのです。
カレーも売れない、参加者も増えない。
そんな、サムライカレープロジェクトのブレイクスルーは、2015年11月のカンボジア対日本戦でした。
ビールを1000本売ったあとの、奇跡
カンボジア対日本戦のスタジアムでの販売には、多摩大学生3人、長期研修生1名、そしてサムライカレー1期のメンバーが2名参加してくれました。
売った物は、ビール。
実は、カンボジアは、ビール一本0.5ドル(50円)で売っています。
しかし、日本から来た観光客はそんなことは知らない。なら、3ドル(300円)で売っても売れちゃうのでは・・・。そんな算段を元に、ビールを売ったところ、思った以上に日本人観光客が多く、途方もなく売れました。
物価を知っている現地人や現地在住日本人は当然見向きもしないのですが、そこは完全に対象外とし、日本人観光客だけに売り続けて、その数1000本!
あまりにも売れすぎて、ビールと合わせて売る予定だったカレーを売る暇がなく、その後3日間カレーを食べ続けたほどです。
カンボジアに来て、日本人観光客相手の商売を体験する。
ある意味邪道なのですが、マーケティング施策としては最適解。
顧客を選ぶことは大切です。
その後、私が日本に帰ったとき、多摩大学から連絡がありました。
「やばい・・・なんか、怒られるのか・・・。」と思いながら大学を訪問してみると
「非常に面白い取り組みなので、大学でオフィシャルプログラムにしたい」
とのこと。
これが、ブレイクスルーとなったのです。
選択と集中
対象顧客を「海外で働きたい、起業したい人」にしていたサムライカレー。
社会人も来ますが、5割くらいは大学生が来ていました。
そして、その大学生に参加1年後くらいに会ってみると
「この話、就活で話したら、無茶苦茶受けましたよー」
などと話してくれます。ちなみに彼は、大手総合商社内定。
「海外で働きたい、起業したい人」の数はせいぜい数万人。
しかし、大学生は全国に約260万人もいます。しかも、毎年1/4ずつ入れ替わる。母数が全く違います。
大学生に選択と集中をすることで、顧客候補の母数は増える。
ならば、そのための施策を考えるしかありません。
大学生が来れるのは2-3月の春休みと、8-9月の夏休みだけ。(あとはGWと正月)
ならば、それ以外の期間はプログラムをやらない。
1年のうち4ヶ月しかプログラムをやらないのであれば、店舗はいらない。
イベントや、マーケットに期間限定出店をすることで、毎回フレッシュな環境で0から店舗作りを行えるようにする。
プログラムをやらない期間は、以前からときどき依頼が来ていた、日本の大学での講義を入れる。
そして、より多くの大学、学生にこのプログラムを知ってもらうことに注力しよう。
大学生が最も関心があり、サムライカレー経験が活きるのが就職活動。
ならば、どのように就活に役立つのかを明確にし、それを講義する「就活講座」をプログラムに組み込もう。
そのために、就活を終えたサムライカレー卒業生50人に会って話を聞き、その活用法を体系化しよう。
2016年はサムライカレーのプログラム募集を最小限にし、大学生向けプログラムのカリキュラム作成に費やしました。
そして、2017年、サムライカレーの参加者は100人を超え、2018年に150人となります。
同時に管轄を始めた、ベトナム、インド、スリランカ、タイのプログラムを含めた「サムライインターン」の参加者は、2019年年間で300人。累計で1000人を超えたのです。
ブレイクスルーのきっかけは、ワールドカップ予選をきっかけに、顧客を選択と集中をするのを決断したこと。
ちなみに、ワールドカップ予選会場ではカンボジア在住のお客さんを選択しなかったわけですが、今のサムライカレープロジェクトでは徹底的にカンボジア人の顧客を喜ばせるための商品を学生に探させます。
そのためのマーケティング手法を講義で教え、ヒアリングするカンボジア人を紹介し、試食会をする場所を確保し、現地の人と対話をしながら、現地の人を喜ばせるために頭を使ってもらうのです。
自分たちが、何もリサーチせずにカンボジア市場に乗り込み、思いつきで売ったカレーが売れなかったという経験をしたからこそわかる、現地の人とコミュニケーションすることの大切さ。
これを学んだ学生は、卒業後に働いた会社でも、その会社の商品開発や海外展開、営業に、必ずや戦力となってくれるはずです。
そんな人材を育てるために、日々カリキュラムをブラッシュアップしています。
第三章:未来編
2020年以降、景気の冷え込みが予想されており、すでに就活戦線には異常が出始めています。
2020年の就活は、ちょっとだけ氷河期が来ます
私は、いわゆる「就活氷河期世代」と言われる世代で、同年代に就活でつまづき、その後も苦労している人がたくさんいます。
しかし、私自身は、好き勝手やって生きていくことができました。
それは、海外で、外国人と仕事をすることに躊躇がなかったからです。
私は、そういう人材を育てるために、サムライカレーをやっています。
日本の人口は減っている。しかし
日本人の人口は減っていても、世界全体の人口は増えている。
日本人の平均年収は減っていても、世界全体の平均年収は増えている。
私が所属していた日産自動車が、車の9割以上を外国で売っているように、世界全体を相手にビジネスをすれば、成長産業はたくさんあり、日本が不況になっても余裕で生きていけるわけです。
ちなみに、外国人との仕事は、別に海外に住む必要はありません。
私は、日産の厚木の山奥事業所で1日6時間外国人とテレビ会議していましたし、今も、日本からスマホでカンボジアのスタッフに指示を出しています。
また、観光で日本に来る外国人も、コンビニ定員からIT技術者までいろんな仕事のために日本に住んでいる外国人もたくさんいます。
住むところはどこでもOK。日本人以外の人もお客さんにして、日本人以外の人と協力して仕事ができるようになればいいんです。
日本人は「ガイジン怖い」
では、なぜ多くの日本人がそれをやらないのか?
それは、「なんかよくわからないけど、ガイジン怖い」だからです。
なんでよくわからないか?
それは、外国人と話をしたり、一緒に仕事をしたことがないからです。
だから、体験して欲しいんです。
実際に外国に住んでみて、外国人に話を聞いて、彼らがどんな生活をしていて、どんなことをしたら喜んでくれるか知って欲しいんです。
一緒に仕事をして、協力して、一緒に何かを成し遂げることができる仲間だと知って欲しいんです。
これを、体験として自分の中にインストール出来れば、外国は怖くなくなります。
東京から大阪に行く感覚で、プノンペンにいくことができるようになります。
一緒に仕事をする相手の国籍なんてどうでもよくなります。
言葉の壁は、技術によってどんどん低くなっています。
新聞記事やメールの文面、契約書なんかは、すでにGoogle翻訳がかなり正確に訳してくれます。
スマホが同時通訳をしてくれるようになるのも時間の問題でしょう。
でも、どんなに正確に言葉ができても、伝えるモノがなければ何も生まれません。
相手を喜ばせるための何かを、提供できるようになる必要があるんです。
だから、サムライカレーでは、カンボジア人に何かを売ります。
カンボジア人の9割は、日本人の9割が好きな、ジャパニーズカレーライスが嫌いです。彼らにとって、カレーの匂いは、納豆の匂いみたいなもんです。
まず、「自分がいいと思うものを、お客さんがいいと思うとは限らない」ということを体感してもらいます。
そして、「じゃあ、お客さんは何を求めているのか」を知るための方法を身につけてもらうのです。
それ以外のプログラムも、
現地の人を喜ばせるためのなにかを探す
現地の人と協力して成し遂げる
という点は共通しています。
国境を意識せずに、自分の周りの人を幸せにできる人材を育てるため、我々のプログラムは日々、進化していきます。
そして、たくさんの日本人が、自分たちで創った商品、サービスを、世界中の人たちに提供し、喜んでもらえるようになれば、その時には、また豊かな日本がかえってくるはずです。
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